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宇宙兄弟 / 小山宙哉

 

32巻まで読んだ。面白い。今後も追いかけたい漫画が1つ見つかった。次々と現れる癖のあるプロフェッショナルたちに、持ち前のキャラクターと知識と運で立ち向かい難題を解決していく主人公「南波六太」が素晴らしい。イケメンじゃないしw。

 

それにしても魅力ある登場人物が多い。選抜試験でライバルになる者、JAXANASAの宇宙飛行士や職員など、それぞれに特化した能力がありそのバックボーンとなるエピソードが用意されている。初めは嫌な奴に見えたり、陥れようとしてくるがだんだん協力的になってくる。物語の王道といえば簡単だけれど1人1人が丁寧で深い。取材も多くしているであろう回想シーンなどは、むしろ宇宙兄弟のベースといえる。宇宙開発に関わる人物ばかりなので当然各々のスペックが高い。たくさんいるので登場回の早いキャラなどは新キャラによってだんだん存在感が薄れていくのだが、これに抗う2人の特殊キャラがいる。南波家の夫婦である。

 

鳶が鷹を生むではないが宇宙飛行士の兄弟の親には全く見えない2人。ダジャレ好きで、漫画なので似ているか分からないモノマネをする父親とそれを絶賛する母親。今のところあのキャラクターとなった背景的なエピソードはない。少し馴れ初めは気になるところだし、母親の若い頃の髪型を確認したいw「おけーりー」から始まる南波家のシーンは物語での「緊張と緩和」の内のゆるゆるな緩和部分なのだろう。ただ今後2人の知られざるエピソードが描かれないとも限らない。

 

実写映画化もアニメ化もしていて人気作なのでもちろん存在は知っていた。これまで読むきっかけがなかったのだが、読みたいという欲求をさらに高めたのは「カサリンチュ」の「あと一歩」の影響だった。ローカルテレビで歌を聴いて以来好きになった彼らの楽曲とせりか編のエピソードとのドッキングはインパクトがあった。これを漫画でしっかり読んでみたくなった。ALSのこと、ネット伝達の怖さ等が話に盛り込まれとても考えさせられる。あと一歩なかなか研究の結果が得られず涙をこらえて耐えるせりかの様子は心打たれる。このタイミングで宇宙兄弟サイトでは10周年記念テーマソングで再びカサリンチュとのコラボ中のようで大変楽しみである。

 

宇宙兄弟内ではじめて知った「グリーンカード」は印象的だった。実際の宇宙飛行士の試験では行われていないようで調べてもほとんど情報は拾えなかった。漫画オリジナルのエピソードのようだが読者側としては大変興味深かった。単純に全員を騙すのではなく1人は騙す側に回るというのが面白い。指示される者も知らずにいる者もストレス負荷は相当だと思う。グリーンカードをもらった人ともらわない人ではどちらが大変だろうか。現実世界ではやってほしくないことだけれど、いつグリーンカードを仕込まれてもいい心構えでいることは人生においてとても有効かもしれない。

 

それから南波六太がときどき言い放つセリフにはグッとくるものがある。今のところ一番心に残ったのは「本気の失敗には価値がある」という言葉。失敗が大切という部分よりも、本気なら失敗してもいいという意味で救われる。本気のチャレンジならば結果に関わらず得るものはあるということ。文章だけで見るとどこかのビジネス書か自己啓発本にありそうだけれど、漫画で物語の中でセリフとして描かれると説得力がある。六太が宇宙飛行士として適正があることを納得させるエピソードとしても秀逸である。

 

六太とせりかが今後どうなっていくのかが気になる。スペックは高いけれど恋には鈍感なキャラって安直だけど萌える?